知財転職の視点

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生成AIで、知財の仕事はどう変わる?
知財の仕事でも、生成AIを使う場面が現実のものになってきました。

特許調査や明細書、翻訳だけではありません。発明発掘、中間処理、契約、IPランドスケープなど、対象となる業務はかなり広がっています。

日本知的財産協会(JIPA)も2026年9月1日、「生成AI活用ハンドブック 第1.0版」を発行しました。知財実務への生成AIの導入を前提に、精度や情報管理、社内ルール、業務への組み込み方などを課題として挙げています。

では、これから知財の仕事はどう変わるのでしょうか。

転職という視点で考えると、「AIを使えるか」だけではなく、AIを使うようになったとき、人に何が残るのかの方が気になります。

すでに「AIを使うかどうか」の話だけではなくなっています。

生成AIと知財というと、少し前までは「使って大丈夫なのか」「どんな業務に使えるのか」という話が中心でした。

今は、その先まで進んでいます。

JIPAが今回公表したハンドブックでは、発明発掘、出願書類の作成、中間処理、契約書の作成・レビュー、IPランドスケープなどがAI活用の対象として挙げられています。

特許庁でもAI活用は進んでおり、2026年4月からは、AIで自動生成・自動付与した検索インデックス「GAIA-Index」の一部がJ-PlatPatで検索できるようになりました。

つまり、生成AIは知財とは別の世界の話ではなく、すでに知財実務の中に入ってきています。

文章作成や情報整理では、AIを使う場面が増えています。

例えば特許翻訳では、AIが出した翻訳を人が確認し、修正するという仕事の進め方があります。

明細書やクレームでも、情報をまとめる、文章のたたき台を作る、表現を検討するといった部分では生成AIを使えます。

調査でも、大量の情報から必要なものを探したり、分析するための材料をまとめたりする作業は、AIとの相性がよい分野です。

これまで人が最初から最後まで手を動かしていた仕事の一部をAIが担い、人が確認する。

こうした仕事の進め方は増えていくと思います。

一方で、AIが作ったものをそのまま使えるとは限りません。

最後にその内容を確認し、仕事として使えるかどうかを判断する必要があります。

発明者との打ち合わせは、文章を作る仕事とは違います。

特許事務所で明細書を作成するとき、発明者から受け取った資料を文章にすれば終わり、という仕事ばかりではありません。

発明者から話を聞いて、

「この構成は必須なのか」

「別の構成でも同じ効果が出るのか」

「従来技術との違いはどこなのか」

と確認しながら、発明の内容を掘り下げていきます。

企業知財でも、研究者や技術者から話を聞き、出願すべき発明を見つけたり、事業との関係を考えたりする仕事があります。

ここで必要なのは、きれいな文章を作る力だけではありません。

相手が話している技術を理解すること。説明の中で足りないところに気づくこと。もう一度聞いた方がよいところを見つけること。

実務を考えると、こうした部分まで生成AIに任せれば済む、とはまだ考えにくいところです。

AIが作ったものを直すにも、実務経験が要ります。

生成AIを使えば、経験が浅くても一定の文章を作れるようになるかもしれません。

一方で、その文章のどこがおかしいのかを見つけるには、技術や特許実務についての知識が必要です。

明細書であれば、技術内容を正しく捉えているのか。必要な事項が抜けていないか。権利範囲を考えたときに、この書き方でよいのか。

翻訳であれば、原文の技術的な意味を正しく反映しているのか。特許文書として適切な表現になっているのか。

中間処理であれば、拒絶理由を踏まえて、どのような応答が妥当なのか。

AIがそれらしい回答を出したとしても、それをそのまま使えるとは限りません。

むしろAIを使う仕事が増えるほど、出てきたものを見て「これは違う」と判断できる人が必要になるとも考えられます。

「AIが使える人」だけで採用が決まるわけではありません。

転職を考える方にとっては、ここが気になるところだと思います。

これからは生成AIを使った経験が、職務経歴の一つになることは十分考えられます。

ただ、知財の採用でそれだけを切り離して考えるのは難しいでしょう。

例えば特許実務なら、どの技術分野を経験してきたのか、明細書作成や中間処理をどこまで担当してきたのか、発明者との打ち合わせをどの程度経験しているのか。

企業知財なら、権利化だけなのか、発明発掘や研究開発部門との連携、契約、他社特許調査、知財戦略などにも関わってきたのか。

こうした実務経験があり、そのうえでAIをどう使えるのか。

採用側が知りたいのも、AIを使ったという事実だけではなく、実務の中でどう使っていたのかという点でしょう。

私自身、知財の転職相談を考えるときも、「生成AIを使った経験があります」だけでは、その方の強みはまだ分かりません。

何の業務で使い、最後に自分で何を判断していたのか。

そこまで聞いて初めて、経験として見えてきます。

これから価値が上がる仕事、下がる仕事と簡単には分けられません。

「AIに代替される仕事」「AIに代替されない仕事」と分けたくなりますが、知財実務ではそれほど単純ではないと思います。

例えば明細書作成でも、定型的な文章を作る部分と、発明者から話を聞いて発明を掘り下げる部分では性質が違います。

特許翻訳でも、原文を別の言語に置き換える作業と、技術内容や特許特有の表現を理解して訳文の正確性を判断する作業は同じではありません。

企業知財でも、調査資料をまとめる作業と、その結果を見て研究開発や事業側と何を話すのかでは役割が違います。

職種そのものがなくなるかどうかより、一つの職種の中で、人が時間をかける部分が変わっていくと考えた方が実態に近いのではないでしょうか。

これから経験を積むなら、AIの前後にある仕事も見ておきたい。

生成AIが普及しても、知財の仕事には、技術を理解する、発明者から話を聞く、権利化の方針を考える、事業との関係を見る、といった仕事があります。

そしてAIを使うなら、その出力を確認する人も必要です。

これから転職先を考えるとき、「その会社は生成AIを導入しているか」だけを見るのではなく、

自分はどこまで考え、どこまで判断する仕事を任されるのか。

こちらも見ておきたいところです。

生成AIによって知財の仕事が一気になくなる、という話ではありません。

ただ、これまで時間をかけていた作業の一部が短くなり、代わりに人が考えたり判断したりする部分の比重が変わることは十分考えられます。

知財の仕事をこれからも続けていくのであれば、AIそのものを使えることだけではなく、AIが出したものを自分で判断できる経験をどう積んでいくか。

そこは、これからの知財キャリアを考えるうえで無視できなくなってきています。