知財転職の視点

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50代からの知財転職。「管理職経験」をどう考える?
「次は管理職でなくて構いません」

50代の方から転職についてお話を伺っていると、こうした話になることがあります。

長く企業の知財部門で働き、部長や課長などを経験してきた方でも、次の会社で同じ役職に就くことを希望しているとは限りません。

「もう一度、実務に近い仕事をしたい」

「これまでの経験を若い人の育成に使いたい」

「役職より、専門性を活かして長く働きたい」

転職を考える理由も、これからやりたい仕事も人によって違います。

ただ、「管理職にはこだわらない」というだけでは、まだ次の仕事は見えてきません。

50代の知財転職では、管理職を経験しているかどうかだけではなく、それまでどのような知財実務を経験し、これからそのうち何を使って働きたいのかまで考える必要があります。
50代の知財経験者が、これまでの管理職経験や専門実務を振り返りながら今後の働き方を考えている様子
50代の知財転職では、管理職経験だけでなく、これまで培ってきた専門実務を次の仕事でどう活かすかも大切な視点になります。

50代では、管理職経験だけを切り離して考えにくくなります。

企業知財で20年、30年と経験を積めば、その間に仕事内容も変わっていきます。

若い頃は出願・権利化を中心に担当し、その後、他社特許調査や契約、FTOなどへ仕事が広がり、さらに管理職として部門をまとめるようになった方もいるでしょう。

一方で、管理職になってから実務を直接担当する機会が減り、部下の案件管理や他部門との調整、予算、人材育成などが中心になっていることもあります。

同じ「知財部長経験者」であっても、その中身はかなり違います。

そのため転職を考える際も、

「部長を何年経験したか」

だけではなく、

管理職になるまでに何を経験してきたのか。管理職になってからも、どの実務に関わっていたのか。

ここを見る必要があります。

企業知財では、権利化以外の経験も次の仕事に関係します。

企業知財の経験といっても、担当する仕事は企業によって異なります。

国内外の出願・権利化を中心に経験してきた方もいれば、FTO、他社特許調査、IPランドスケープ、知財ポートフォリオの構築・管理、契約・ライセンスなどに関わってきた方もいます。

さらに、研究開発部門や事業部門と一緒に、どの技術を権利化するのか、他社特許との関係をどう考えるのか、知財を事業にどう活かすのかといった仕事を経験していることもあります。

例えば、同じ「企業知財経験20年」でも、

出願・権利化を中心に担当してきた方と、FTOやIPランドスケープを通じて研究開発・事業部門と仕事をしてきた方では、次の会社で活かしやすい経験も同じではありません。

もちろん、IPランドスケープやFTOを経験していれば転職に有利、という単純な話ではありません。

どこまで自分で担当していたのか。

分析結果を誰に、どのように伝えていたのか。

その結果が研究開発や事業上の判断にどう使われていたのか。

そのため、経験の有無だけではなく、実際にどこまで関わってきたのかを見ていくことになります。

50代の企業知財経験者の場合、「知財経験○年」という年数より、その中で何を任されてきたのかが、その後の仕事を考える材料になります。

特許事務所では、明細書作成などの実務経験が一つの軸になります。

特許事務所で長く勤務してきた弁理士や特許技術者の場合は、また見方が変わります。

例えば、

機械、電気・電子、化学・材料、バイオなど、どの技術分野を担当してきたのか。

発明者との打ち合わせから明細書作成まで担当してきたのか。

中間処理をどこまで経験しているのか。

国内案件だけでなく、外国案件にも関わってきたのか。

こうした実務経験があります。

管理職やグループリーダーを経験していても、自ら明細書を作成し、中間処理を担当している方であれば、マネジメントだけをしてきた方とはキャリアの見え方が違います。

特に、次の特許事務所でもプレイヤーとして働きたいのであれば、役職経験より、現在もどの程度自分で案件を担当しているのかが重要になることがあります。

「管理職を降りても構わない」だけでは、まだ希望条件にはなりません。

私自身、50代の方のお話を伺う際、「管理職にはこだわりません」と聞けば、それで希望条件が決まったとは考えません。

その先をもう少し聞きます。

なぜ管理職でなくてもよいのか。

もう一度自分で案件を担当したいのか。

研究者や技術者と話をする仕事に戻りたいのか。

若手を育てることには引き続き関わりたいのか。

企業の知財課題を支援する側へ回りたいのか。

ここが違えば、検討する転職先も変わります。

例えば「管理職でなくてもよい」という企業知財経験者でも、FTOやIPランドスケープの経験を活かしたい方と、出願・権利化の実務へ戻りたい方では、探す仕事は同じではありません。

特許事務所勤務の弁理士でも、明細書作成を続けたい方と、若手のチェックや育成を中心にしたい方では違います。

役職を外すことより、その後に何をするのか。

50代の転職では、こちらの方が大きな問題になることがあります。

プレイヤーに戻るなら、実務から離れていた期間も見ておきたいところです。

「管理職を離れて、もう一度プレイヤーとして働きたい」

その希望自体は不自然なものではありません。

ただし、過去に経験したことと、現在できることは分けて考えた方がよいでしょう。

例えば、以前は自分で明細書を多数作成していたものの、管理職になってから長期間チェック業務だけになっている場合。

企業知財でも、以前は自分で特許調査や権利化を担当していたものの、ここ数年は部門管理が中心という場合。

採用する側から見ると、

「以前何をしていたか」

だけでなく、

「直近ではどこまで実務をしているか」

も気になるところです。

逆に、管理職になった後も重要案件には自ら関わっていた、FTOの判断や事業部門との協議を続けていた、明細書作成や中間処理も担当していた、ということであれば、その点は具体的に伝えた方がよいでしょう。

管理職経験と専門実務は、必ずしも別々ではありません。

ここは50代の知財転職を考えるうえで、意外と見落としやすいところです。

管理職になると、「マネジメント」と「専門実務」を別々の経験として考えがちです。

しかし、実際の知財業務では、きれいに分かれていないこともあります。

例えば企業知財で、部下が行ったFTO調査の結果を確認し、研究開発部門と対応を検討してきた管理職。

事業部門と知財ポートフォリオについて話し、出願・維持・放棄などの判断に関わってきた管理職。

特許事務所で、自ら明細書を作成しながら、若手が作成した明細書のチェックや指導も担当してきた弁理士。

こうした経験では、専門知識を使わずにマネジメントだけをしていたわけではありません。

むしろ、自分で実務を行う立場から、他の人の仕事を見て判断する立場へ経験が広がったと考えることもできます。

次の転職でも、必ず「管理職」か「プレイヤー」かのどちらか一方を選ばなければならないとは限りません。

企業知財で培った経験を、違う立場で使うことも考えられます。

企業知財を長く経験した方であれば、次も別の企業の知財部門という選択がまず考えられます。

ただ、これまでの経験によっては、それ以外の方向も検討できます。

例えば特許事務所で企業を支援する側へ回る。
また、これまでの経験によっては、企業や研究者の知財活動を支援する仕事を検討することもできます。


企業の中で知財業務を経験してきたからこそ、企業側の考え方や事情が分かることもあります。

一方で、転職先が変われば求められる仕事も変わります。

企業知財で長く働いた経験が、そのまま特許事務所の明細書作成経験として評価されるわけではありません。

逆に、特許事務所で長年明細書を作成してきた経験が、そのまま企業でのFTO、契約、知財戦略などの経験になるわけでもありません。

どちらが上という話ではなく、経験してきた仕事が違います。

50代で別の立場へ移るのであれば、その違いも見たうえで検討する必要があります。

年齢の影響がないわけではありません。

50代の転職について、「経験があれば年齢は関係ない」と言い切ることはできません。

企業や特許事務所によって採用方針は異なりますし、年齢、年収、役職、技術分野、勤務地、働き方など複数の条件が関係します。

特に50代後半になると、これまでの経験に加えて、今後どのような働き方を希望しているのかも採用時の確認事項になりやすくなります。

一方で、50代だから全員同じ条件になるわけでもありません。

企業知財でどのような実務を経験してきたのか。

特許事務所でどの技術分野を扱い、どこまで自分で明細書を作成してきたのか。

管理職になった後も専門実務に関わってきたのか。

希望年収や役職をどこまで重視するのか。

こうした条件によって、検討できる求人は変わります。

だからこそ、年齢だけを見て「もう難しい」と判断するのも、反対に「経験が長いから大丈夫」と考えるのも早いと思います。

これまでの経験のうち、次の仕事で何を使いたいのか。

50代まで知財の仕事を続けてきた方には、それまで積み上げてきた経験があります。

企業知財でFTOやIPランドスケープ、知財ポートフォリオに関わってきた経験。

研究開発部門や事業部門と調整してきた経験。

特許事務所で発明者と打ち合わせを重ね、明細書を作成してきた経験。

中間処理や外国案件に対応してきた経験。

そして、人を育てたり、他の人の仕事を判断したりしてきた管理職としての経験。

そのすべてを、次の職場でも同じように使う必要はありません。

次も管理職として働きたいのであれば、それも一つの方向です。

役職にはこだわらず、もう一度専門実務に比重を置きたいという考え方もあります。

これまでとは違う立場から、企業や若い知財人材を支援する仕事を考える方もいるでしょう。

50代からの知財転職では、

「これまで何の役職だったか」だけではなく、「これまでの経験のうち、これから何を使って働きたいのか」。

そこまで考えてみると、役職や年齢だけで求人を見るのとは、転職先の選び方も変わってきます。