知財転職の視点

  1. ホーム > 
  2. 知財転職の視点 > 
  3. 企業知財の採用で、“社内コミュニケーション力”が重視される理由
企業知財の採用で、“社内コミュニケーション力”が重視される理由
特許事務所から企業知財への転職をご検討されている方から、

「知財経験はあるのに、面接では発明者との関わり方や他部署との調整経験について聞かれることも多いです。」

というご相談を受けることがあります。

特許事務所で権利化実務を中心に経験されてきた方ほど、その違いに驚かれることがあります。
明細書作成や中間対応、国内外出願などの専門性があるにもかかわらず、面接では「他部署との調整経験」や「事業部との関わり方」を細かく聞かれることがあるためです。

企業知財でも知財実務そのものは重要です。ただ、一方で採用では、“知財業務をどう社内で機能させられるか”という視点まで見られることがあります。
発明者や事業部と打ち合わせを行う企業知財担当者のイメージ
企業知財では、発明者や研究開発部門、事業部など社内のさまざまな関係者と連携しながら知財業務を進めます。

企業知財は「社内の間に入る仕事」が多い

募集内容だけではイメージしにくい部分ですが、企業知財は「知財部内だけで完結する仕事」ではないことが多くあります。

たとえば、

・発明者との打ち合わせ
・研究開発部門との整理
・事業部との優先順位調整
・外部特許事務所との連携
・経営層への説明
・他部署への知財教育

など、日々の業務では、このような社内とのやり取りが繰り返されます。

特に近年は、単純な出願件数管理だけではなく、「事業にどう知財を活かすか」を重視する企業も増えています。そのため、知財担当者にも“社内翻訳”のような役割が求められる場面があります。

研究者の言葉を整理し、経営視点へつなげる。あるいは、法的観点を技術部門へ分かりやすく説明する。企業知財では、そうした調整や橋渡しが日常的に発生します。

「話し上手」が求められているわけではない

経験者の方からは、「営業的なコミュニケーションを求められているのでは」と不安に感じる声もあります。

ただ、企業知財で見られているのは少し違います。

企業知財で見られている“コミュニケーション力”は、必ずしも外向的な性格やプレゼン能力だけを指しているわけではありません。

むしろ、

・専門用語を相手に合わせて整理できるか
・相手部署の立場を理解しようとしているか
・感情的にならず調整できるか
・必要な情報を過不足なく伝えられるか

といった、実務上の安定感を見ている場面が多くあります。

特にメーカー系企業では、「知財としては正しい考え方でも、それだけでは組織が動きにくい」という場面もあります。だからこそ、“押し切る力”より、“社内で進められる力”が重視されることがあります。

特許事務所から企業知財へ転職した際に感じやすい違い

特許事務所によっては、比較的個人作業比率が高い環境もあります。

もちろん、顧客対応や発明者対応を多く経験している方もいますが、一方で「基本的には自分で案件を進める」という働き方に慣れているケースもあります。

そのため、企業知財へ転職した際、

「意思決定に時間がかかる」
「部署調整が多い」
「技術以外の説明も必要」
「社内会議が多い」

といった違いに戸惑う方もいます。

逆に、企業知財経験者が特許事務所へ移る際には、「ここまで個人裁量が大きいのか」と感じることもあります。

このあたりは、優劣ではなく、“仕事の構造そのものが異なる”と考えた方が実態に近いかもしれません。

採用側は「社内で働くイメージ」を見ている

実際のご相談では、「知財経験はあるのに書類が通らない」という相談を受けることがあります。

もちろん、年齢や技術分野、募集背景など複数要因がありますが、企業知財では「この人が社内で機能するイメージを持てるか」が比較的大きく見られることがあります。

特に、

・発明者との関係構築
・事業理解への関心
・他部署との温度差への対応
・説明スタイルの柔らかさ

などは、面接で確認されることがあります。

実際には、非常に優秀な実務家でも、「知財視点だけが強く見えてしまう」ことで、企業側との温度差が出るケースもあります。

反対に、すべてを強く主張するタイプではなくても、「現場と協力しながら進められそう」と感じられることで、評価につながるケースもあります。

企業知財は、“どの会社でも同じ”ではない

比較検討を進める中で重要になるのが、「企業知財にもかなり差がある」という点です。

たとえば、

・権利化中心か
・発明発掘比率が高いか
・戦略寄りか
・調査分析寄りか
・事業部との距離感
・外注比率
・知財部の立ち位置

などは企業によって大きく異なります。

また、同じ“コミュニケーション重視”という表現でも、

「発明者対応を丁寧に進められる人」を求めているのか、
「事業部へ積極提案できる人」を求めているのかで、実態はかなり変わります。

そのため、求人票だけでは分からない部分も少なくありません。

応募前の段階で、「その会社の知財部がどのような役割を担っているのか」を整理しておくことで、入社後のギャップが減ることもあります。

企業知財への転職では、年収や知名度だけではなく、“自分がどのような立ち位置で働きたいのか”を整理することが、結果的に長期的な納得感につながるケースもあります。

同じ企業知財という募集でも、企業によって求められる役割や働き方は大きく異なります。

だからこそ、募集要項だけでは伝わりにくい職場の特徴や知財部の役割まで理解したうえで応募先を選ぶことが、入社後のミスマッチを防ぐことにつながります。